1.マーケティング課長の能力要件については、マーケティング課長のリーダーシップで述べた通り、①マーケティング力 × ②マネジメント能力 × ③人間性 の掛け算で表わされる。これに、④リーダーシップ(目標設定力+動機付け能力)が加わる。これらの4条件は、マーケティング課長(参謀将校)に是非とも必要な能力要件となる。

2.マーケティング課長の人柄が会社の信用に大きくかかわる点を軽視するわけにはいかない。マーケティング課長の言動は、会社のイメージに直結する。社外の人々は、特にマーケティング課長の一挙手一投足をよく観察していて、その会社のレベルを判断していると言ってもよい。真摯な判断、公平な判断、正しいコミュニケーションができる人材をマーケティング課長登用の条件に加えるべきである。企業イメージに影響する。

3.マーケティング課長はエース級の若手人材の中から選ぶべき。

その理由1)若くないと、広く時間をかけて社外の有力な人々との情報交換ができない。時間を割いて相手を訪問し、対話し、店頭を観察し、現物を分析し、文献を読み、レポートにするには、若い体力、気力がどうしても必要である。

その理由2)若いマーケティング課長の『やる気』『やる力』『やるチャンス』が組織のダイナミズムの源泉になる。
・『やる気』とは当然、「主体性」と「目的意識」である。
・『やる力』とは、「マーケティング力」と「マネジメント力」と「人間力」と「リーダーシップ」である。
・『やるチャンス』とは、自ら会社の機会と問題点を踏まえて、自分の長所発揮の出番(チャンス)を創り出すことである。自分でプロジェクトを立ち上げる。
トップマネジメントおよびマーケティングマネジャーは、この若手マーケティング課長の最高の出番『やるチャンス』を用意する責任がある。会社の基本理念、基本方針、基本戦略に合致するプロジェクトを任せることは、人材活用の面から見ても、将来の業績向上の面から見ても、たいへん重要である。

その理由3)シャープな情報感度を持っている若手マーケティング課長のところに情報は集中する。よく行動し、素直によく傾聴するから集まるのであるが、魅力ある若手に対しては、先人はよく高度な情報を惜しげもなく与える。将来を嘱望されるからである。今後、活躍が期待される人物のところへ情報は集まる。

3.マーケティング課長の『やる気』『やる力』『やるチャンス』は会社を根本から変える力がある。したがって、早ければ27才、28才でブランドマネジャーに登用するつもりで、新入社員教育から本格的な主任、係長研修を受講させ、マーケティングの体系とノルムをしっかり教え、自主管理による「目標管理」を実行させ、実力を早期に強化していく。エース級のミドルの直接OJT(マーケティングメモ、マーケティング・プランの添削)を義務付け、さらに磨きをかけていく。

35才くらいで、グループ・プロダクトマネジャー(部長級)やマーケティングマネジャー(部長級)が十分に務まるように育成する。そして、実際に抜擢する。このような人物が成長し、選ばれてCEO、CMOになり、世界の強豪を相手に互角以上の市場戦争を繰り広げてくれる。このようなCEOやCMOは基本的に内部登用で育成するのが筋である。外部から来てもらうのは余程のときのみである。

4.現代は若手マーケティング課長を多数育成できる会社が最後に勝利する。「人材開発競争」すなわち「マーケティング課長育成競争」である。開発や生産技術、IT技術の専門家の育成も同時並行的に進めなければならないが、やはりマーケティング課長の育成が一番大切である。それは将来の優れたトップマネジメントの連続育成が企業生き残りと発展の決め手になるからである。

5.適材を選んで計画的に厳正に育成する。この体制を持続し、発展させている会社が結局、世界の勝利者になる。若手が十分に活躍できる場を組織的に作るのは、現在のトップマネジメントの責任である。極めて重要な責任である。CEOやCMOは、正しい基礎理念、正しい基本方針、正しい基本施策を打ち出し、我が社を正しい方向に導く最終責任を負っている。

(2013年6月度MODコラム「マーケティング課長のやる気・やる力・やるチャンス」長井和久)より