1.販売量の予測の意義

現代の企業は計画生産をし、計画販売を実行しないと、経営は成り立たない。販売量の予測が計画生産の基になる。

では、販売量の予測をどうやってやるかと言うと、この製品の真のニーズは何であるか、これらの製品はそれをどの程度満たしているかを明らかにしていくしかない。メーカーが勝手に作り、勝手に販売したのでは必ず商品に過不足が生じる。消費者に受け入れられる製品の開発がまず先である。消費者が商品に求めているものは何かを明らかにしなければならない。

販売量の増減は、消費者ニーズとは別に、競争相手の供給能力や製品力によっても左右される。また、代替商品の登場によっても大きく影響される。がしかし、今や、製品力の差が販売量に一番関係する重要要素だということは、ほとんどの人がわかっている。

2.売りの現場観察、現物分析

販売量はその会社の販売能力の関数でもある。売れる店にきちんと配荷しているか、優位な陳列ができているか、POPは正しく書かれ、正しく貼られているか、広告や販促プロモーションは効果的に伝達されているかも販売量(販売シェア)に反映する。

3.消費者の家庭を訪問して観察し、ヒアリングする

消費者ニーズのデータ(事実)は消費者の心の中にあるが、それはなかなか聞き出しにくい。消費者自身がまだ自覚していないニーズもあるだろう。販売可能量(当社製品の需要量)を調べるのに、まず一番基礎になるのは、現場・現物・現実の直接観察および直接対話である。

例えば、顧客(ヘビーユーザー、ミドルユーザー、ライトユーザー)の家庭を訪問し、どのメーカーのどの製品がどのようにして使用されているか、それは十分満足のいくものであるか、不満というならどこが不満か、それはどのような理由によるものか等を聴くのが、最も早くて確かである。

社員を活用して75世帯ぐらい実地観察 兼 聴取するという方法が、最近どの企業にも求められている。自社の社員の目で、自社の今までの問題意識を総合して、訪問家庭で何を観察し、何を質問するかが有効に設計され、これが共有されているならば、この75の家族の聞き込みと観察(一部、写真撮影からでも)ほぼ大まかな事実はわかってくる。

4.ヒアリング調査の深読み

社員の原始データにある情報を定性的に整理するとともに、いくつかのグループ(クラスター)に分けて比較分析(クロス)すれば、共通した特徴や差異点を見出すことができる。

5.現物比較

他に、現物比較(売れる/売れない分析)や、成分、素材、加工法、パッケージの比較からも、何故、売れるのか/売れないのかの情報を引き出すことは、短時間、少人数でできるはずである。

6.ストアチェックの効果的利用

もうひとつ、ストアチェックがある。500店くらい実施すれば、どのくらいのストアカバー率であるか、どの棚にどのように有利に陳列されているか、価格はどうなのか、売れ筋ブランドは何と何なのか、その距離感はどうなのか、無配荷原因は何なのかが、たった一日の調査と一夜の集計で、翌日には明らかになる。流通の当社に対する反応もよくわかる。

7.マス調査の精度を上げる

各家庭のヒアリングの結果から得たニーズに関する情報は、整理すればマス調査にかけられるレベルにまで高められる。75軒の家庭からわかったことと、現物比較、ストアチェックからわかった課題や問題点を検証する質問票の設計は、それほど難しいものではない。

調査会社に丸投げする前に、社員の協力を得て内部でわかることは全部整理し、適確な質問票にしていけば、500~700人の消費者態度調査から相当のインテリジェンス(重要情報)が得られる。

まず、仲間内の話し合いから、情報を整理、分解し、因果関係を明らかにして、仮説を立てる。この仮説検証型の消費者態度調査やグループインタビューにお金を使うほうが効果的である。

普遍的ではあるが、これが「究極の消費者調査」であり、これを日常的に実行している企業が先手必勝のマーケティングができる土台があると言える。

(2013年7月度MODコラム「究極の消費者調査」長井和久)より