「今、我々はどのような状況にあるか」を知らなかったり、よく考えていなかったりすると、自分に与えられている課題は何かをはっきり文章化(規定)できない。個々バラバラの状況認識からは、共通の課題は生まれない。

共通の課題がないとき、あるいは課題が明確になっていないときは、いくら話し合っても、いくらKJ法などカード(ポストイット)を出し合っても、答えは出ない。ワークショップ(グループ研究)を生産的なものにするには、リーダーはまず課題を明確にしなければならない。

課題を明確にするには、我々を取り巻いている状況が一体何々であるか、何が重要な状況であるかを整理しなければならない。それには、メンバーが状況だと感じていることを一度総まくりして、因果関係や目的と手段の関係などの思考の技術を使って、重要な状況を参加者が納得でき、しかも簡潔にわかりやすい方法で絞り込まねばならない。

いろいろな状況に基づいて、それでは我々は今は何を為すべきかを抽出していく「状況の判断」についての基礎素養のレベルが高い集団は、早期に「何が問題か」「何が今の課題か」の討議に行き着ける。しかし、実務的に言うと、すべての状況を全部共有するには時間がかかり過ぎる。状況の共有のみで終わる危険性がある。

●短い時間で課題を明確化するステップ

1.ある程度、状況が共有できたところで、個人個人に「今何が重要な状況か」について、もう一度1人3分くらいで代わる代わる発表してもらう。

2.課題だと思うことを、何でも書き表す。(25項目以上)

3.各自、最も重要、あるいは、たいへん重要と感じる3つに○印をして、○印をした理由を言ってもらう。公開で課題の絞り込みをする。

4.この○印とその理由(ワケ)の発表を聞いてメンバーは、重要事項の取り方の違いと、その裏付けである理由の妥当性について、今までより広範囲の情報で考えることができる。視野が広がるので、何が中心の課題かについて、わかりかけてくる。

5.このとき、すかさずリーダーが重要課題の定義(文章化)と、その重要である理由の整理を行ない(模造紙)、全体の合意を得る。

ゴール:チームの課題が明確になれば、メンバーは課題解決について、集中して建設的な知恵を出してくる。このあとリーダーが課題解決計画をまとめる作業は、それほど難しいものではない。

(2011年9月度MODコラム「ワークショップリーダーは課題の明確化が一番の仕事」長井和久)より