トップが経営におけるマーケティングの重要性をよく認識している企業は、マーケティングの導入に成功する。それらのトップは、マーケティングの論理を早くから理解する。企業成長の願いをこめてマーケティングを本格的、体系的に把握しようとする。率先してマーケティングを学んでくる。

トップが講師となって「プロダクトマネジャー・マニュアル」の社内輪読会を開き、会社の今の重要課題を共有し、問題解決しようというような企業は、マーケティングの消化吸収がたいへん早い。

筋の通ったマーケティングの基本を定め、これを正式に学習し、重要課題の問題解決に生かすようにOJTされる社員は、急速にマーケティングを身に付ける。マネジメント力も急速に向上してくる。P&Gが内部からの登用、昇進(ブランドマネジャー出身)で代々のCEOを選んでいるのは、まことに理にかなっている。

トップが本気でマーケティングをやろうとする会社のミドルは、大いにやりやすい。ミドルが本格的にマーケティングの技術を習得し、ブランドの開発とマネジメントに活用するようになる(ミドルアップ)。売上と利益は向上してくる。部下を巻き込むと、下から売上と利益を突き上げるボトムアップになる。

ミドルが先に気付き、トップを説得してマーケティングカンパニーに変身していく方法もある。この任を果たすミドルは大きな壁を次々と体当たりで破らねばならないが、乗り越えると大成長する。次世代のトップ、準トップになる。

先に気が付いたミドルが部下や同僚を巻き込み、マーケティングの勉強会やマーケティングのワークショップを立ち上げるのは、よい着手点になる。まず、既存ブランドの改良開発で売上と利益をあげて、トップを説得するのがよい。

問題は、何から着手するかのマーケティングの課題の絞り込みと、チームを引っ張っていくリーダーシップである。こういうミドルこそ、マーケティングを本格的に学習すべきである。大きなやりがいがある。

(2012年2月度MODコラム「本格的なマーケティングの導入」長井和久)より