自力でマーケティングを勉強し、会社を強くすることが国を強くする。自力で人材を育成し、経営を強化する。これが、今の日本の企業に一番必要な施策になると考えている。マーケティング人材の育成が一番大切だ。

世界中の消費者の心の中に我が製品(ブランド)のブランド・ポジショニングを確立するのだという決心をして、全社員が力を合わせ、きちんとしたマーケティングを実行し、新しい付加価値を生み出すのが、最も国力を挙げる方策になると考える。国が活性化する。

この失われた20年の間、いろいろな企業を見てきたが、堅実なマーケティングで成長する企業がある一方、マーケティング力の強化とマネジメントの強化から逃げているような企業を散見した。中途半端な商品改良やサービスの改良で何とかしようというような企業は結局何もできないし、この2~3年で消えていくだろう。

何がこの熱意と怠惰を分けるのか、原因を帰納法的に追求してみると、一番の問題点は経営トップがマーケティングとマネジメントの勉強が苦手である、という本質的な問題に突き当たることが多い。しんどいらしい。また、このトップを補佐するミドル(役員、部長)の向上心が弱いという問題にもよく突き当たる。トップの能力不足は確かに大問題だが、ミドルの弱さもまた同等に大問題である。

自分の会社の運命にかかわるし、自分の生活にもかかわる。ひいては国の興亡にかかわる大事というのに、正攻法のマーケティングの科学的アプローチをもっと①知る→②わかる→③やってみるという人がたいへん少ない。①、②、③ができないのに、④できる→⑤成果が上がる→⑥よい習慣がつくに至る階段を登ることは絶対にできない。

マーケティングの組織開発を専門とする立場から言うと、いつの間にか日本人、日本企業は怠惰な民族になってしまったのではと、戦慄を覚えるときがある。このままでは子孫の没落は明らかだ。

マーケティングとマネジメントの体系とノルムは、今の日本は世界に負けないくらいの水準を保っている。その気になれば世界最高水準のマーケティングが勉強できる。日本特有の技術とチームワークの強みもある。これらを真剣に学習し、一生懸命活用すれば、経営は必ず良くなる。利益は上がる。

新年は、新しい気持ちで、新しいコンセプトを考えるのに最適の季節である。一人の人間として個人の心の平和とリラックスをはかることは確かに大切であるが、一人の日本人として、今年一年の勉強と実行を計画し、目標達成を決心するのが、ビジネスの基本であるはずだ。社会的な責任である。

担当製品のポジショニング・ポイント(P点)の明確化に集中しよう。P点を明確にして、その芯をバットの芯で叩くのだ。芯に当てるまでのプロセスをひとつひとつ科学的アプローチで検証し、仮説を煮詰め、本質・中心・最重点を理性と勇気で定める。そうして渾身の一撃を放つ。

我々の一打、一打から日本はよくなる。よい国になる。

(2013年1月度MODコラム「愛国のマーケティング」長井和久)より