プロダクトマネジャー・マニュアル〔第Ⅰ章 マーケティング組織の開発〕P.Ⅰ-49「クルト・レビンの力の場の分析理論」をマーケティングの組織開発に適用して考えてみると、我が社がマーケティングカンパニーへと変身していくのに誰が反対者になっているか、その抵抗者というか、マーケティングがわからない役員や部長は誰なのか、どのくらいわからないのかを、固有名詞で明らかにすることが、規制力の現状を把握することの第一歩になる。

「マーケティングとは何かわからない」「マーケティングをやるくらいなら営業を強化せよ」「マーケティングの前に開発だろう」などという声を何となく感じ取ることも、まあ、規制力の把握といえば把握であるが、そんなあいまいな問題認識では、何も行動が起こせない。何もかもウヤムヤのうちに事態は次第に悪化していく。ズルズルと、である。

「マーケティングを経営の中心にする」ことに「誰が反対していて、何が原因で反対しているのか」「彼らの存在がどのくらい会社の発展を阻害しているのか」固有名詞で、その迷惑の程度を調べ出さねばならない。1人1人、リストアップしていくのである。マーケティングを導入しようと決意した人は、これをまずやらねばならない。

マーケティングの導入に反対している人の中には、もしマーケティング中心の経営になってしまったら、自分が今持っている決定権(意志決定権、予算決定権、人事権)が侵されてしまうのではないかという恐怖心を持っていることが多い。ほとんどの場合、それらの人はマーケティングどころか、マネジメントの原理原則も十分知らないままでその職に立っているのだ。そんな会社があり、そんな人物が現実にいる。

そういう人々を幹部にしておいて、それ役員会だ、経営会議だと時間をかけても、何の成果も生まれない。勉強嫌いで権力好きの人々は、マーケティングや組織開発やマネジメント抜きで、自分の好き勝手で経営をやりたいと願っている。本当に心の底からそう願っている人たちがいる。

しかし、本格的なマーケティングについてのコミュニケーション(解説)を繰り返しているうちに、理性に目覚めてマーケティングの重要性に気付いてくれる役員はたまにいる。このように変身してくれると、その役員は推進力になってくれるのだが・・・。

どうしてもわからない、わかりたくないという人には、職を退いてもらわねばならない。こういう意志決定と人事の決定ができるのは、社長1人である。社長が張本人であるときは、その会社はアウトである。社員は早めに退社して、別の人生を歩むほうがよい。

会社をあげてトータル・マーケティングを勉強し、明日からの経営に真剣勝負で取り組まなければ、会社の発展はないし、そのうちきっと社会から消えるだろう。よくて買収である。

かくして、プロダクトマネジャー、ブランドマネジャーが主役となって進める「ブランド・ポジショニング3次元設計図」の作成と共有は、その会社にとってトータル・マーケティング推進上の山場となる。ここは相当揉めるだろう。十分な検証と状況の変化の予測をしたら、最後はトップの承認を得ることが肝要である。

基本理念からブランド・ポジショニング決定までのクリエイティブ作業を効率的に進めることができるスタッフのいる会社こそが、その市場の支配者になる。21世紀のエクセレント・マーケティングカンパニーになれる。

<参考>『本当のブランド理念について語ろう~「志の高さ」を成長に変えた世界のトップ企業50』ジム・ステンゲル (著), 川名周 (解説), 池村千秋 (訳) 阪急コミュニケーションズ

(2013年5月度MODコラム「マーケティングカンパニーになるのに誰が規制力になっているか」長井和久)より