「プロダクトマネジャー・マニュアル」には、2つの流れがある。
主なる流れは、製品コンセプトとブランド・ポジショニングを中核にして、フェーズ1からフェーズ6に至る「製品開発システム」の流れであり、さらに広告宣伝→販売促進→営業力の強化と実績管理という「マーケティング優位性づくり」の流れである。これらは順序立ててつながっている。
一方、この製品開発の流れとマーケティング優位性づくりの流れの裏面には、常に「主体性開発→職場開発→組織開発」という組織開発の3段活用が働いており、この裏面のマネジメントの働きを忘れては、マーケティングは一歩も進まない。
本質・中心・最重点が、マーケティングとマネジメントの間を行ったり来たりする。「プロダクトマネジャー・マニュアル」では各章で流れに沿って、その都度このリアリティをトータル・マーケティングの重要留意点として解説している。
この2つの流れを自分のものにするには何が必要かと言えば、それは実際問題に応用することである。一人一人が自分の実際問題の解決に応用する目的で、必要に応じてマニュアルの該当するところを読み、今日のTODOを形成していくとき、2つの流れはひとつひとつ、皆様のものになる。
この応用の一番大事なところをもう一度、案内する。それは「本質・中心・最重点の思考」である。
1.まず問題点をあげてみる
例えば、「職場のマーケティング学習を促進する」という問題に当たるとすれば、現状の推進点(促進力)と問題点(阻害点)をリストアップすることから始める。
問題点はあげつらいやすいので、まず3つか4つはすぐ出てくる。OD(組織開発)問題はふつう、その3つか4つの問題点の重さや解決の面倒くささに押されて、そこで思考と行動を止めてしまう。この最初の壁を乗り越えねば何事も前へ進まない。問題点はその気になれば一気に10個は出せる筈である。
問題点を10個以上出すコツがある。どうするかというと、メモを取るのである。問題点と思うことをヒマヒマに考えて、1個ずつメモすることが出発点になる。
2.問題点を文章にする
問題点は、「ここが問題点」という具合に具体的に書かなければ解決できる問題にならないのだが、その前の段階の苦情や不満のほうが先に出てくる。問題の取り出し方の幅が狭いと、これらは単なる愚痴と変わらなくなって、そのうち自分が嫌になる。対決せず、逃げてしまう。
勢いのあるうちにメモを20項目、30項目と出して、原因と結果の関係を使って、そのメモをひとつの文章として完成させていく。主語と述語があるしっかりとした文章にしようとするときには理性が働くので、客観的に問題に対峙することができる。1個1個、判断になる。
3.推進点をムリにでも列挙する
並行して推進点(職場のよいところ)をあげる。問題点は問題点で、問題の本質を追求していくのだが、本質的原因がわかってくると、一挙に解決策が見えてくるものだ。手堅い解決策を作るには推進力が必要になる。
推進点をあげるのは問題点をあげつらうより余程難しい。単なる批判分子は、ここでギブアップになる。
推進点をあげるコツは、職場のメンバーの長所を認めることである。改めて発見するというほうが当っているかもしれない。職場のメンバーの活動(長所発揮)があってこそ、問題解決は一歩一歩確かな歩みを開始できる。
4.本質的な問題点を追求する。本質が見えれば最重点が見えてくる。
問題点も推進点もそれぞれ20項目以上あげる。25項目くらいにすると、自分も同志もある意味でもう一杯になる。その一杯の中に本質がある。中心がある。解決策がある。
一番大切と思うところに○印をして、○印をした理由を考えるのが、本質発見のコツである。本質を把握し、中心を定めると、では一体何から手をつけていけばよいかの最重点が見えてくるから不思議だ。
問題は「製品開発システム」にあるのか、「マーケティング優位性づくり」にあるのか、それは組織全体の問題か、職場開発の問題か、それとも個人の問題か、本質を追求していくと、対策が見えてくる。
5.問題点と推進点とは同根
問題点の本質と推進点の本質は、同根である。
個人の場合、長所の過剰使用が一番の問題点であり、長所の発揮が一番の推進点であることは、他者(特に上司)を観察すれば容易にわかる。しかし、自分のことに当てはめるのは誰しも苦手である。職場の問題点の解決の場合も、この個人の問題点の解決とほとんど同じような壁に当たる。
我々は、個人の問題よりは職場の問題のほうが理性的になれる。これを利用しない手はない。同志と「3人寄れば文殊の知恵」を働かせる。わかる人々はこのあたりで一挙にわかってしまう。
6.マーケティングの組織開発のリアルプロジェクトにする
例えば、「この職場でのマーケティング学習の阻害点を取り除き、マーケティングのグループ学習をスタートさせる」という問題解決は、立派なマーケティングの組織開発のリアルプロジェクトになる。2つの流れを一つにする仕事。しかし、本質・中心・最重点は、しばしば自分であったりするのだが…。
(2009年9月度MODコラム「本質・中心・最重点思考」長井和久)