一般の会社員は、マネジャー職にある人であっても、マーケティングの体系やノルム、マネジメントの原理原則を、試験に出る知識のような理解の仕方をしている。「知る」「わかる」はするが、積極的に日々の仕事に役立てようとは思っていない。これはよくあることである。
マーケティングを本格的に我が組織、我がブランドに取り入れようとするとき、その組織戦略なりマーケティング戦略の結論に至る途中で、これは今後とも動かないという基本となる判断を必ずいくつかしなければならない。これを「基本認識」という。
どのような会社でも「基本認識」をいくつか積み重ねていって、結論(経営判断)に至る経験はある。我が社における「基本認識」は、マーケティングの体系やノルム、マネジメントの原理原則を我が組織、我が製品(ブランド)に当てはめた場合、どのような解釈なるか、どのような意味があるかの判断になる。
この「知」に対して問題意識の低い人は、会議に出席しても、マーケティング・プランのプレゼンを受けても、そのような認識はプレゼンの一コマの単なる説明であると思ってしまう。これは「基本認識」であり、「基本認識」は「知の財産」だとは思わない。ここに、マーケティングのOD(組織開発)を進めていく上で大きな機会損失が発生する。
この機会損失を防ぐには、マーケティングのODを進めていく担当者は、組織方針とかブランド戦略の進行にともなって乗り越えていく(クリエイティブする)ひとつひとつの「基本認識」を、その都度文章化して、できれば基本認識集(マニュアル)として、メンバーがいつでも振り返りができるように編集しておかねばならない。後戻りできないようにする。
その組織にとって組織戦略やマーケティング戦略を決める1回1回の判断は、実際には1回1回知力を尽くす判断であるので、これは知的な資産である。この知の資産は次の問題解決のとき使える。新しくまた判断をしなくても、この部分は前回の判断と同じであると気付けば、その時点ですぐ前へ進める。この理性によって会議の生産性を上げることができるし、マーケティングの意志決定のレベルを向上させることができる。
「基本認識」は知的な資産(我が社の理性)であることを明言し、トップ以下、共有の資産として、次回からの会議や意志決定に活用していかねばならない。このことをトップに発言してもらわねばならない。事務局が要る。マニュアルが要る。マーケティング部が担当するしかない。
「基本認識」は意識的に活用していると、いちいち文章(マニュアル)を取り出して確認しなくても、メンバーの誰もがすぐ使える我が社の常識(行動基準)になっていく。わからない人は会議のメンバーになれないことになる。
(2009年10月度MODコラム「基本認識とOD(組織開発)」長井和久)