着手小局の一手は、問題の本質(真の原因)と中心(打開の中心項目)を一度に衝く一手にしたい。その手こそが最重点対策であり、メンバーのヤル気を起させる。

本質と中心を割り出していくのには2つの道筋がある。

第一は、演繹的なアプローチである。「製品開発システム」で、我が社の製品開発(マーケティング)の現状の問題点を広く考え、一番重要なところを導き出す。このように体系とノルムから問題点を考え、問題点の本質を抽出するという方法である。

第二は、帰納法的アプローチである。メンバーがある程度、製品開発の方法を知っており、現実に製品開発の実際を経験していて、いろいろ問題点に気付いているというようなとき、その気付いている問題点、何とかしてくれという点を限られた時間(30分とか60分)で25項目以上、正確な文章(主語と述語)で書き表わす。その25項目の中から最も重要なものを選び出し、その理由(原因)を追及し、本質に迫っていく方法である。

演繹的アプローチと帰納法的アプローチは共にこれを試み、本質・中心を割り出していく。帰納法と演繹法は摺り合わせるべきだ。重要な問題については、本質・中心の仮説を改めてフィールドワークや統計的な調査で検証して、真因や本来の性質を確認する方法が採られる。

一般に、会社の経営方針やマーケティングの基本戦略は、会社の本質的な課題を何度も確かめた上で、その解決のための中長期計画、年度計画として示される。それは、少なくともその会社の総智を結集した答えである。したがって、職場の課題形成(局面打開のテーマ選び)にあたって、会社の経営方針、上司の部門運営方針を、我が職場の現状に当てはめながらテーマ化していくアプローチは、演繹的なアプローチになる。

一方、メンバーの性格や仕事に対する受けとめ方、職場の問題点についての感じ取り方は個々バラバラであるので、これは帰納法を用いて取り出し、文章化(理性)で整理していかねばならない。

職場の問題(我々は今、何を為すべきか、それは何故か)が、職場の本質・中心・最重点として文章で示され、その論理に納得がいくとき、チームは驚くべき知恵を出してくる。主体的に動き出す。

リーダーの示す「ステップアップTODOリスト」は受け容れられるようになる。メンバーのほうから自発的に「ステップアップTODOリスト」が出てくる。局面は打開される。

(2009年12月度MODコラム「局面打開(下)」長井和久)より