マイケル・ポーターは、我が社の中長期の利益を減らす要因として、①今、直接競合する企業からの攻撃、②参入障壁の低さによる第三企業からの新規参入の脅威、③代替品、サービスの登場による脅威、④買い手(顧客)からの価格引下げ要求、⑤供給業者からの値上げの要求の5つをあげ、これを「5つの競争要因」とした。

マイケル・ポーターは、競争戦略とは業界に働くこの5つの競争要因の圧力から、うまく身をかわし、さらに我が社が有利に動ける位置に身を置き、圧力要因に適切に対応し、中長期に収益をあげる体制をつくることが、競争戦略の基礎だと言っている。そして、競争を勝ち抜く手段は、最終的には全社をあげての「差別化」であると結論付けている。

現場にいる我々の実感では、「5つの競争要因」の圧力の中でも①今、直接競合する企業からの攻撃、つまり「直接対決する競合メーカーが打ってくる差別化戦略が一番恐い」と感じる。

もし、競合メーカーが我々のブランドを目掛けて、次々と強いブランドを当ててきて、先に40%の市場シェアを押さえてしまったら、我が社は身動きができなくなり、短期的にも、中長期的にも利益のあがらない企業になってしまう。ジリ貧になる。

業界がまだ成長分野であるなら、市場の伸びのおすそ分けをもらって、何とかしばらくは生き残ることができるかもしれないが、これが成熟期から衰退期に向かう業界にあっては、おそらく短い時間で淘汰されてしまうだろう。完全に衰退産業にいるというのなら、撤退するか、事業売却に踏み切るべきである。

まだ成熟期にいるのなら、現製品を磨き、それを1個1個確固たるブランドにしていく以外に我が社を生き残らせる方法はない。会社をあげてのマーケティング努力によって主力ブランドを再生できるなら、生き延びるチャンスもあるし、新しい発展に持ち込む道も開けてくる。

競争戦略は、ブランド開発競争ととらえるべきである。

(2012年8月度MODコラム「競争戦略とはブランド開発競争」長井和久)より