基礎力を身につけるには、まず基礎を「知る、分かる」することからスタートしなければならない。
基礎というと、膨大な量の基礎に関する文献を読まねばならぬと思う人がいるが、実は、マーケティングの基礎とマネジメントの基礎は合わせても100項目くらいである。
(株)ナガイマーケティング研究所では、マネジメントの基礎とは、まず「現代経営実践理念」の20項目、「行動科学の原理原則」の主要8項目、「組織・管理の原理原則」の主要8項目、「22の思考技術」の22項目を合わせて58項目であるとし、その上に、主に製品開発やパッケージング、マーケティング・プランの各章(プロダクトマネジャー・マニュアル)で、マーケティングの基礎となる考え方や手法を解説しているが、後者は合わせても40項目くらいでおさまる。
基礎力、基礎力と言っても、要すれば100項目の基礎をマスターすればよいと思ってよい。100項目でよいと肚を括ると気持ちが前向きになる筈である。
最初はまず、論理の面で基礎を理解する。「基礎を理解する」ことと、「基礎を使える」には少し距離がある。基礎を身に付けて自分のものとして使えるようにするのが、基礎訓練である。訓練はどうしても必要である。
例えば、相撲にも柔道にも基本技は数多くあるが、選手がこれを全部身に付けているかといえば、テレビ観戦していてもわかるように、実戦において全部は使っていない。
強い選手は、自分の得意技が発揮できるような体勢に持っていって、得意技で勝負を決めている。そのようなよい体勢に持ち込むためには、その途中で小さな得意技を組み合わせて、連続して技をかけ、勝ちを得るパターンが多いことがわかるだろう。
勝ちのパターンはそれ程多くない。意外性のある技を繰り出す、技のデパートという力士がいたが、最高位は関脇か小結ぐらいにとどまる。自分の得意の体勢に持っていって寄り切り、押し出し、上手投げで決めるのが、オーソドックスな勝ち方と言えるだろう。
彼らは基本技を自分に合うように、毎日繰り返し練習して、勝ちパターンをイメージ化し、手順化し、身にしみ込ませて、実戦に備えるわけである。
親方は、恐らく早くから本人の体力や資質を見抜いて、過去の成功例、つまり、同じような身体能力と運動神経の成功力士をモデルにして、あるいは組み合わせて、本人の入幕から三役入りをイメージし、繰り返し稽古をつけているのだろう。
大一番の前、力士が仕度部屋で付き人を相手に立会いのシミュレーションをしている画像が流れることがある。恐らく土俵下でも、相手にも得意の体勢があり、これを想定した上で相手十分の体勢に入るのをどう防ぎ、自分の得意の体勢をどう作っていくか、いろいろ考えている筈である。
しかし、本人に得意技がなければ、この一番、相手とどう戦うかの戦略は描けないだろう。戦う前から負けてしまう。
基礎力は、基礎を論理的によく理解した上で、何度も稽古して身に付け、自分に合う使い方、組み合わせ方を編み出してこそ、獲得していくものだと思うのがよい。得意技が未来を拓く。
(2011年2月度MODコラム「基礎力と基礎訓練(下)」長井和久)より
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